元手なしで資本金を増加させる方法(その2)

カテゴリー: コンサルティング業の税務・会計

(投稿者:河野周輔)

平成18年に会社法が施行されましたが、施行当時は、利益剰余金の直接の資本組み入れは制度として存在していませんでした。やるとすれば、株主に利益剰余金から配当を行い、株主がその配当金を元手に会社に金銭出資をする方法しかありませんでした(この方法は配当金支払時に課税が行われるので、税金分だけロスがありました。)。

会計学の重要な原理原則として、元手である資本金と、その運用結果である利益剰余金は区別しなければならないというものがあります。リンゴの木が資本金であるとすると、リンゴの果実は利益剰余金です。元本であるリンゴの木と、リンゴの果実は生い立ちがそもそも別物であるのでこれらを区別することなく同一のものとしてはなりません、という考え方です。

会社法はこの原則を厳格に守り、平成18年の会社法施行当時は利益剰余金を一度、配当により社外へ流出させなければ資本金に転化することができませんでした。しかし平成21年4月の会社法の改正で、会社法において元本と果実の区別についての考え方が緩和されたことにより、利益剰余金を直接、資本金に変化させることができるようになりました(資本剰余金と利益剰余金の互いの行き来は不可能です)。また、利益剰余金の資本組み入れは、法人税法上、株主に配当が行われたものとは見られませんので配当課税のロスも起こりません。

利益剰余金をもって資本金を増強させたい、と望む中小企業にとってこの改正は歓迎されたのではないでしょうか。

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