社会保険料計算の特異性1では、毎月の給料から天引きされる健康保険料・厚生年金保険料の計算は「標準報酬月額」という実際の支給金額とは少し違ったものを使用するということをご紹介しました。
では賞与を支給されたときの健康保険料・厚生年金保険料はどのように計算するかというと、「標準賞与額」というものに保険料率を乗じて算出するのですがこの「標準賞与額」は標準報酬月額のような等級が定められておらず、実際支給額をそのまま使います。ただし、1,000円未満の端数は切り捨てますのでたとえば賞与額が432,625円だとすると、1,000円未満切り捨てで432,000円が標準賞与額になります。
毎月の給与から天引きされる社会保険料は、標準報酬月額というアバウトな金額を使うのに対して賞与はなぜか実支給額を使うというチグハグな方式になっています。なぜそうなっているのか、推測なのですが書いてみます。いざ年金事務所が総合調査を行う機会があったときに賞与の社保金額が正しいかどうかを確認するチェック労力は、賞与ですので通常年に1回か2回程度です。それくらいの少ない回数であれば給与台帳の実支給額と被保険者賞与支払届が一致しているかはラクにできます。
厚生労働省「賞与は支給回数が少なく、賞与だったら賃金台帳と賞与支払届が一致しているかのチェックは負担にならないから標準賞与額は実際支給額と同じということでいいや。毎月の給与の社保計算が、もし賞与みたいに実際支給額から計算するんだったらそれが毎月毎月、正しいかどうかを検証する体制を年金事務所が持っていなければいけないけど、そんな体制を構築するのはお金もかかるし、仕事も増えるし、ものすごく大変だからアバウトな標準報酬月額方式で本当に良かった。標準報酬月額方式であれば、基本、1年に1回しか等級が変わらないから毎年9月(10月)に等級が変わっているかということと、9月(10月)以降の社会保険料が同じ額でずっと続いているかをチェックすれば大体は間違いないだろうからね。」