(投稿者:河野周輔)

顧問先の会社の領収書や請求書を見ておりますと、たまに合同会社の名前のものをみかけることがあります。偏見ではあるのですが、合同会社という名称から受ける印象はやはり、設立登記費用を少しでも安くしたいと考える極めて小規模な会社なんだろうなという印象を受けてしまいます。このように思ってしまうのは決して私だけではないと思います。もしかすると取引先相手の会社の誰かもそう思っているかもしれません。

設立登記費用は確かに株式会社に比べて14万円安くなるのですが会社を10年、20年続けるつもりなのであれば14万円という金額なんかは大した金額ではありません。第三者から、株式会社じゃなくて合同会社なんだと思われ続けるのが少しでもストレスに感じられる方であれば、合同会社ではなく株式会社にしておきましょう。

また、株式会社は㈱という全角1文字で変換が可能ですが合同会社にはそのような変換はありません。(合)というふうに3文字必要になってしまいますので、非常に些細なことですが、㈱というフォントが用意されている点で文書作成においてメリットがあります。

(投稿者:河野周輔)

もし会社設立を考えている人が、「合同会社を作りたいんですけど」と言い出した場合には、私であれば思いとどまらせます。合同会社ではなく株式会社を設立することをお勧めします。それは、合同会社の知名度がまだ低く、どんな会社であるのかが外から見たときに瞬時に判別しづらいということと、合同会社は一般的に設立費用の安さが強調されるものですから、なんとなくお金がないからしょうがなく合同会社にしたというイメージが付いて回るからです。

ただし、取引先がどんな法人であるのかを気にしないケース、いいかえるとお客さんが一般消費者である場合にはどんなサービスが受けられるかが最も重要であるので、そういった場合には合同会社であっても適していると思います。

たとえば八百屋、美容院、旅館、小規模な飲食店、アパート貸付業(住居用)などが該当します。これらのお客さんは一般消費者であってサービスが会社の名前で選ばれるわけではなく、そのお店がお客さんの満足を満たしてくれるかどうかで選ばれるものであり、また、法人名は前面に出ませんのでお客さんは合同会社であることについて気にしません。よって合同会社であっても商売上は大きな問題にはなりません。

合同会社の特徴

カテゴリー: 法人税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

1人だけで会社を興す場合、株式会社と合同会社をどちらを選んでも会社運営に大きな違いは出ません。ところが誰かとタッグを組んで2人の出資者により会社を興す場合、株式会社と合同会社で大きな違いが出てきます。

株式会社は株式を多く所有する者が、その会社を支配することになります。株式を多く持つ者が会社の重大意思決定を行い、配当を受けることができ、解散したときに残った財産を手にすることができます。会社にお金を出して、株式を所有している者がエラい組織形態です。会社を支配するためのモノサシが株式数だけですので、この点シンプルです。

一方、合同会社はお金を出した人が必ずしもエラいというふうにはならない組織形態です。社員(=出資者)が複数人いる場合、合併や解散は社員全員の同意がなければ行うことができません。社員が2人いたとして、一人が90万円を出資した社員、もう一方が10万円を出資した社員である場合であっても、10万円の社員がイヤと言えば合併も解散もできません。株式会社は所有株式数がモノを言う、お金さえあれば好き勝手できる組織ですが合名会社はそうではありません。そういった面で、合名会社はお金がモノを言う組織ではなく、ヒトがモノを言う組織であります。

合名会社は、社員(出資者)に会社を経営する役割(業務執行権限と言います)が付与される組織であり、いくらお金を出したかではなく、会社を経営するヒトが合併や解散といった会社の重大事項を決めるものであるという考え方となっています。

合同会社のメリット

カテゴリー: 法人税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

会社を作る場合、通常は株式会社を選択しますが、まれに合同会社を選択する方もいます。合同会社のメリットで一番最初に挙げられるのが、設立費用が株式会社に比べて安いという点です。

株式会社の場合、設立コストは定款認証5万円+登録免許税15万円=20万円であるのに対し、合同会社は定款認証0円+登録免許税6万円=6万円となります。設立に際して14万円の差が出ます。(定款認証は、電子認証の場合です。)

なお、上記の株式会社20万円、合同会社6万円には、会社設立代行業者に支払う手数料は含んでいません。ただ、その手数料は現在は非常に安く、安いところを探せば1万円程度でやってもらえます。

事業を法人として始めたいのだけれど、イニシャルコストを少しでも安く済ませたいことを最重要で考えるのであれば合同会社を選ぶ手があります。

(投稿者:河野周輔)

この仕事をやっておりますとわからないことも出てきますので当局に質問の電話することがあります。そのときに、税務署(国)と地方自治体(県・市)とでは質問回答に対する態度が大きく違ってくることになりますので注意が必要です。

税務署は、課税の取扱いに関する質問は自分で調べてね、という考え方です。自分で調べてみて正しいと思う処理でまずは申告してみてください、それが正しいかどうかはいずれ行われる税務調査で確認されることになるでしょう、というスタンスです。個別的な質問については電話では回答してくれません。仮に電話で回答があったとしても回答者(税務署職員)はその回答に責任は持ちえません。イチ税務署職員が行った電話回答の通りに処理をした場合であっても税務調査で否認される場合もあります。税務処理の是非がはっきりするのはあくまで税務調査の場においてです。

一方、地方自治体は、税金の質問があれば、質問に対しては親切丁寧に教えてくれます。回答者(自治体公務員)はその回答に責任を持ちます。以上のことは次の違いから来ています。

税務署(国)
→1.申告納税方式である。
→2.税務調査が頻繁に行われる。

地方自治体(県・市)
→1.賦課課税方式である(固定資産税、不動産取得税、自動車税など)。
→2.税務調査が滅多にない。

ですので、地方税に関してはわからないことがあれば遠慮なく質問してみましょう。経験を積んでいくと自分自身の質問の仕方スキルも上がっていきますので効率的な質問ができるようになります。

社員と従業員

カテゴリー: 法人税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

一般的には会社で働く人のことを「社員」と呼びますが、ほとんどの税理士は会社で働く人のことを社員とは呼びません。社員ではなく、「従業員」と呼びます。

「社員」は本来、法律用語として別の意味を持っており、株主のことを指します。法律用語で社員とは社団の構成員のことをいいます。なぜ通常、株主を「社員」と呼ばないかというと、社員という法律用語は上位概念の用語であるからです。会話で、「乗り物に乗ってハワイに行った」と言う人はいないと思います。普通は「飛行機に乗ってハワイに行った」「船に乗ってハワイに行った」となります。「社員」は「乗り物」と同様の上位概念となりますので、出資者である株主という用語を使うときには「会社の社員」でなく、「会社の株主」となります。

この「社員」が法律用語である社団の構成員であるという意味が頭から離れない人(弁護士、会計士、司法書士、行政書士、税理士)は「会社の社員」を使うと株主を指してしまうことになるので社員は使わないで、従業員という用語を敢えて使います。

ただし、正社員、契約社員、新入社員、嘱託社員など、社員の頭に何かしらが付けば、そのときはもはや法律用語としての社団の構成員とは意味が違うことが明らかですので、弁護士、会計士、税理士であってもこれらの用語は使用します。「社員」は使わないのですが、「正社員」は使います。デリケートに用語の使い分けをしている人たちも居るというハナシでした。

(投稿者:河野周輔)

均等割とは、法人住民税(地方税)で支払わなければならない税金です。東京都の場合、70,000円~でしてこれは赤字であっても支払わなければなりません。

会社が利益剰余金を減少させて資本金の額を増加させた場合、現行では均等割をいくら払うかの「資本金等の金額」判定では、影響がありません。つまり、利益剰余金由来による資本金の増加があったとしても、「資本金等の金額」では増加したこととは見られませんので、均等割の額は変わりありません。
元手なしで資本金を増加させる方法(その3)

H27税制改正大綱によると、利益剰余金を減少させて資本金の額を増加させると、増加後の資本金の額によっては均等割が増加するよう、改正がありそうです。

(投稿者:河野周輔)

資本金が1億円超である大企業には、外形標準課税と呼ばれる課税が行われています。外形標準課税は国税ではなく、地方税です。

資本金が1億円以下であれば外形標準課税は行われませんが、資本金が1億円超になった途端に、余計な税金と、計算するための労力がかかってくることになります。税の観点だけでみれば外形標準課税は良いことはありませんが、利益を多く出すという観点では資本金が厚くないとできない事業もたくさんありますので、大企業は外形標準課税を受忍せざるをえないということです。

さて、外形標準課税の税率の変更が行われます。次の通りとなります。
増税と減税のどちらもあります。資本割と付加価値割は増税で、所得割は減税です。

減税の恩恵を受けられるのは、利益を多く出す会社です。利益が多いと所得割の減税が受けられるからです。例えばですが、具体的な数字を挙げてみます。改正前と改正後の税率差が増税額・減税額です。

資本割:資本金1億5,000万円×(0.4%-0.2%)=300,000円の増税
付加価値割:3億6,000万円×(0.96%-0.48%)=1,728,000円の増税
所得割:1億円×(7.2%-4.8%)=2,400,000円の減税

上記の例でいくと、300,000+1,728,000-2,400,000円=▲372,000円の減税です。利益が一定金額出れば減税になりますが、逆に利益が出ないと赤字の年でも資本割と付加価値割はかかってきますので、その年は減税の恩恵を受けられず、増税のみ行われてしまいます。

所得が0であった場合を上と同じように計算すると、
資本割:資本金1億5,000万円×(0.4%-0.2%)=300,000円の増税
付加価値割:2億6,000万円×(0.96%-0.48%)=1,248,000円の増税
所得割:0円×(7.2%-4.8%)=0円の減税

増税額を合計すると、1,548,000円の増税となります。

繰越欠損金の改正もそうでしたが、利益を出さない大企業を冷遇する流れになってきています。大企業である以上、利益を出し続けろという政府からのメッセージでしょうか。

(投稿者:河野周輔)

繰越欠損金が使いづらくなりました。ただし、影響があるのは大法人だけで資本金が1億円以下等の中小法人については関係ありませんので中小法人にとっては増税でもなく減税でもない中立です。

平成29年4月1日以降の事業年度はな、な、なんと所得制限が50%になってしまいました。たとえば繰越欠損金が7,000万円生じてその翌年に所得が5,000万円発生しても5,000万円×50%=2,500万円しか控除できません。(7,000万円/所得-2,500万円/控除)×35%法人税率=1,575万円の法人税の納税をしなければなりません。まだたっぷりと繰越欠損金が残っているにもかかわらず、です。

繰越欠損金を無駄なく使えるようにするには、繰越期間の10年以内に、繰越欠損金が消せるだけの利益が出せるかを計画しておく必要があります。繰越欠損金が生じる大法人では、繰越欠損金が消せないとなると大法人で居続けることは税制上不利になります。不利であると判断した場合には中小法人に変更する経営判断も必要となってくるでしょう。

25.5%から23.9%法人税率は下がりますが、その税収減を補うため繰越欠損金制限による税収アップを図っています。

(投稿者:河野周輔)

本日、H26.12.30に平成27年度の税制改正大綱が公開されました。この大綱に基づき、平成27年の税制改正が行われることになります。(自民党のホームページに掲載されています。)

なお、一定の中小法人(資本金1億円以下等)については、年800万円までの所得については軽減税率15%が適用されますが、平成27年度の税制改正では、この15%の税率がさらに下がるということはありません。800万円超の部分の税率のみが下がるということになります。つまり、中小法人については所得800万円以下は従来より税率が変わらず、所得800万円超部分については減税ということになります。一方、大企業はもともと所得800万円以下の軽減税率がありませんので所得にかかわらず常に減税になります。

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