(投稿者:河野周輔)

社会保険は税法という枠組みではなく、厚生年金保険法や健康保険法という社会保険の枠組みである所以なのかもしれませんが、計算方法が結構独特です。

サラリーマンの社会保険料がどうやって算出されるかというと、給与額を47段階の等級に分けてその人が、どの等級に当てはまるかを決めます。下図の赤い枠線内の、どこに給与額が当てはまるかを確認して、当てはまった範囲の左にある青い枠線内の「標準報酬」が自分の社会保険料計算の基となる金額となります。例えば月給が27万円の人は、赤い枠線の270,000以上~290,000未満に当てはまるので、その左の青い枠線の280,000円が社会保険で使用する金額となります。

月給270,000円の人の毎月の社会保険料は、標準報酬280,000円に厚生年金保険料率(17.474%:労使折半)と健康保険料率(11.69%:労使折半。介護保険を含む。)を乗じて算出されます。

税法の計算では、月給27万円×12ヶ月=年収324万円から各種控除を差し引いた金額に、一定の税率を掛けるので、もちろん実際に支給された月額27万円そのものを計算に用いるわけですが、社会保険は27万円しかもらっていないのに、標準報酬としては28万円となってしまいます。よって社会保険計算で用いるベース金額が実際支給額よりも1万円アップしてしまいます。

現在の制度では月給270,000円(注)と人と、月給289,999円(注)の人は、給与から天引きされる社会保険料が同じ金額ということになります。天引きされる社会保険料が同じということは、月給270,000円の人よりも月給289,999円の人の方が給与に対する社会保険料率が若干低いということです。



(注)月給は通勤手当込みの金額です。

地方税の利用開始届の注意点

カテゴリー: 電子申告

(投稿者:河野周輔)

地方税で電子申告(eLtax)の利用開始手続をするためにはJava Runtime Environment (JRE)をインストールする必要があるのですが注意点があります。それはオラクルが用意する最新バージョンのJREではなく、それよりも古いバージョンをインストールしなければならないという点です。

2014年9月時点のJRE最新バージョンはVersion 7 Update 67なのですが、eLtaxではVersion 7 Update 25のものをインストールしないと、正常に利用開始手続を完了させることができません。

eLtaxのサイトがイケていないのは、eLtaxのサイトからVersion 7 Update 25をダウンロードしようとするとリンクエラーとなってしまい、結局自分でVersion 7 Update 25を探さないといけないという点です。(2014.09.26時点。今後解消されるのだろうとは思いますが。)

(投稿者:河野周輔)

前回の記事について少し付け加えます。

赤の金額が社会保険料支払いによるキャッシュアウトで、青の金額が社会保険の支払いにより税が軽減される金額です。つまり、社会保険の支払いが行われることにより、税のキャッシュアウトが行われなくなる金額です。社会保険料控除によりキャッシュアウトが行われなくなる影響を、社会保険支払いによる「税効果」と言ったりもします。

青の金額は、赤のキャッシュアウトを抑えますので、赤の金額から青の金額を引いた金額が、社会保険料の実質負担額となります。グラフで示すと次の黄色の金額になります。ちょうど、赤と青の間に挟まれた金額となります(千円単位で金額を表示しています)。

これが高いと思うか、妥当かと思うかは人それぞれで考え方は違います。会社経営をしているオーナー社長であれば社会保険でキャッシュアウトするよりも社会保険に加入しない方法により、なるべく多くのキャッシュを確保したいと考えるかもしれません。

(投稿者:河野周輔)

社会保険料を支払うと、個人の税金(所得税と住民税)が安くなる、という関係を図で示すと次のようになります。

横軸は給与年収です。年収120万年から3,600万円まで取っています。赤線はその年収に対する個人の社会保険料負担額です。青棒はその社会保険料を支払ったときにどれくらい所得税・住民税が安くなるかを表しています。(社会保険料控除と基礎控除のみを考慮しています。)

年収が多くなると所得税・住民税の税率が合計で50%となりますが、青棒の金額が、ちょうど赤線の半分くらいのところに位置しているのは約150万円の社会保険料の支払いに対して、約75万円の税金が安くなるということを意味しています。

社会保険の支払いによって赤線についてはキャッシュアウトしてしまいますが、一方で青棒だけ税金が安くなっていますので実質としては「赤線の金額-青棒の金額」だけキャッシュアウトしていることになります。

逆に、社会保険を全く支払わないのであれば、「赤線の金額-青棒の金額」だけ社会保険を支払う場合に比べて手許にキャッシュを残すことができるということなります。

(投稿者:河野周輔)

社会保険料を支払うと、実は所得税計算が安くなる計算が行われます。「社会保険料控除」という所得控除がありまして、支払った社会保険料については税率を掛ける前の所得からマイナスされます。税額控除ではなくて、所得控除です。社会保険料を年間100万円支払っている人で、所得税率+住民税率が30%ですと、100万円×30%=30万円の所得税+住民税が安くなっているということです。住民税にも社会保険料控除がありますので左の計算になります。

社会保険料は高いので、憤りを感じている人もいらっしゃるでしょうが、支払った社会保険料の何%かは、税金が安くなっています。人の考え方はそれぞれですので、社会保障が受けられてしかも税金まで安くなるとはなんて素晴らしい制度なんだと思う人も中にはいらっしゃるかもしれません。

世の中には社会保険料を敢えて低くしている人がいます。月給100万円なのに月給10万円の給与にして健康保険料・厚生年金料を支払ったり、法人で健康保険・厚生年金に入らないといけないのにそれらに入らずに、個人で国民健康保険・国民年金に入ったりしたりする人達です。こういった人達は支払う社会保険料が少なくなる分、正規に社会保険料を支払っている人よりも所得税・住民税を多く支払っていますし、将来の厚生年金受取額も正規の人よりも少なくなります。

(投稿者:河野周輔)

健康保険料率(介護保険含む)と厚生年金保険料率の合計が約30%となるわけですが、少し補足すべき点があります。それは健康保険も厚生年金も給与がある水準までいくと、それ以上保険料が頭打ちになるということです。

上図の赤い線が、それぞれの頭打ちの給与ラインになります。厚生年金保険料は月給63万5,000円以上は、給与天引きされる健康保険料は増えません。また、健康保険料は117万5,000円以上は、増えません。

月給が63万5,000円未満までは、給与に約15%を乗じた社会保険料(健康保険+厚生年金)が控除されますが、それ以上になると、まず厚生年金で頭打ちとなり、その次に健康保険で頭打ちになりますので給与に対する社会保険料の割合は小さくなっていきます。グラフ化すると次のようになります。横軸は月収で、縦軸は月収に対する社会保険料率を表します。

当然ながら月給が多いほど、社会保険料の負担率は小さくなります。月収に対する社会保険料率、という意味ではこのグラフの左側に当てはまる方が高い負担になるということになります。ただし、社会保険料率は高いかわりに所得税率は低いです。逆にグラフの右側の高所得者は社会保険料率は収入に比して低い代わりに所得税率は高いです。平成27年より所得税+住民税の最高税率は55%です。

給与が高額でないときは社会保険料で取られ、高額になると所得税で取られる。取る側の仕組みは本当によくできています。

(投稿者:河野周輔)

平成26年9月分以降の社会保険料率は次のようになっています。(東京都の場合)



まず見るべきは、赤く囲みました健康保険料率と厚生年金保険料率です。介護保険を含めた健康保険料率は労使合計で11.69%、厚生年金保険料率は労使合計で17.474%です。両者を合計すると29.164%です。なんと約30%にもなります。

もちろん、この30%は半分を会社が負担して半分を従業員が負担しますので、給料をもらうサラリーマンからすれば15%で済む、というハナシなのですがこれが会社経営をするオーナー社長自身の視点だと見方が変わってきます。

会社のオーナー社長は、会社から自分に支払う給与も自分のお金であると同時に、会社に残るお金も自分のものです。オーナー社長は、財布が2つあるわけです。個人の財布と会社の財布です。この2つの財布が社長の所有物なので会社が支払う社会保険料も、社長が自腹で支払っていることに変わりありません。そのためオーナー社長は、会社負担分の社会保険料も自分で支払っているということを認識しておかなければなりません。となると、負担する社会保険料率は30%です。給与の30%が、社会保険料としてキャッシュアウトするということです。

給与の30%が社会保険料としてキャッシュアウトするというのはスタートアップ段階の会社では非常に影響が大きいです。サラリーマンをしていた人が会社を設立して独立する際には、この社会保険料率30%に一番注意しなければなりません。独立する前に十分理解しておかないと社会保険負担に苦しみます。サラリーマンには「会社負担の社会保険料」のキャッシュアウトは、会社が見えないところで勝手にやってくれていることですのでわからないのです。自分で会社を設立して初めて気がつくのです。

(投稿者:河野周輔)

平成29年9月まで、毎年、厚生年金保険料率は上昇していきます。

こちらは日本年金機構のホームページで掲載されている料率の推移を抜粋したものです(http://www.nenkin.go.jp/n/www/share/pdf/existing/pension/kousei/pdf/standard_insurance_1.pdf)。
数値を1,000で除すると、割合が出ます。167.66は0.16766の率のことです。

9月に毎年3.54%上昇していきますので、足りていないところを補いますと
平成25.9.1~ 171.20
平成26.9.1~ 174.74←今回
平成27.9.1~ 178.28
平成28.9.1~ 181.82
平成29.9.1~ 183.00(現在予定のゴール)
となります。

平成29年9月に、会社負担+従業員負担の合計で18.3%の率となるところまで引き上げられる予定となっています。

(投稿者:河野周輔)

毎年恒例の行事ですが、この9月は厚生年金保険の保険料率が上昇します。平成26年8月までは17.120%(会社負担+従業員負担)でしたが、平成26年9月からは17.474%となります。0.354%のアップです(一般被保険者について)。会社負担率は半分の0.177%ですので毎月1,000万円の給与を支払っている会社ですと概算で毎月17,700円の経費増ということになります。なお、厚生年金保険料率はアップしますが、健康保険料率・介護保険料率の変更はありません。

また、9月発生分より4・5・6月給与で計算した算定基礎届により、標準報酬月額が変更されますので給与計算担当者は忘れずに給与計算ソフトに反映させる必要があります。

退職金で節税7

カテゴリー: 節税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

小規模企業共済をやるかどうかについては、1(やる)か0(やらない)かの選択肢ではなく、年間MAX84万円ですので、「毎月3万円だけやる」という選択肢もあります。これはお金をどう振り分けるかのポートフォリオの問題になります。

会社にお金を残して会社で好成績で運用する自信はあるけども、実際問題上手くいかない可能性もあるので小規模企業共済の節税効果の恩恵も受けておきたいといったときに年間MAXの84万円ではなく、月3万円、年間36万円にするという選択肢です。会社での運用が上手くいかなかった場合の保険をかけておくようなものです。住宅ローンを借りるときも全額を変動金利にするのではなく、半分を変動金利、半分を固定金利とするようなものです。中庸にするのは、中途半端な利益しか得られませんが、自分が張っている方と相場が大きく逆に動いたときにはダメージを軽減してくれます。

絶対に小規模企業共済は有利だと思い込むのではなく、お金をどういうふうに振り分けるのが自身のキャッシュを最大化することになるのだろうかということを、ときには立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。

退職金で節税6

カテゴリー: 節税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

小規模企業共済は法人と個人の節税効果が高いので、やるのが絶対的な善であると私自身、思っていました。ところが、この一連の記事を書きながら法人に残ったキャッシュによる運用益との比較をしないと本当にどちらが有利かがわからないのだなという発見がありました。

小規模企業共済をせずに、キャッシュを法人に残すのが良いかどうかは、本当に個々の法人の事情によります。前回の記事でキャッシュの運用益率がある程度出ないと小規模共済に負けてしまうということを書きましたが、キャッシュが潤沢にあったとしてもそれを商品や人に投資してリターンが得ることが難しい状況の会社なのであれば、やはり小規模企業共済の方が有利ですし、逆にキャッシュがあればあるほど新たな収益源を生み出せる会社は小規模企業共済なんかにお金を預けるのは収益のチャンスをそれだけ減らしていることになるのでもったいないということになります。(小規模企業共済は年間最大84万円と小さな金額ですが、小規模企業共済でなくとも、生命保険の解約返戻金を利用した退職金支払いについても同様です。)

所得税・相続税で個人への課税は強化されてきていますが、逆に法人税は今後も税負担が減少していくことになろうかと思います。昔と比べれば法人税の負担が少なくなってきていますので、負担が少ない分、どんどん法人税を払って会社にお金をのこしていこうじゃないか、そして法人でもっと稼ごうじゃないかという動きがマクロで見ると進んでくると思います。

自己資金となるキャッシュは、税引後利益でしか得ることができません。銀行への返済も、個人的な社長借入返済もすべて税引後利益の数字が作れて初めて返済できるものです。会社の自己資金力は、どれだけ法人税を支払ったかで決まります。法人税の負担が小さくなってきている今、法人税を積極的に支払う姿勢を見せる会社の方が、底力のある会社になるのではないでしょうか。

退職金で節税5

カテゴリー: 節税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

これまで書いてきたように、(法人で給与の上乗せ支給)+(個人で小規模企業共済)を毎年100万円ずつ行わない場合では、行う場合と比較して法人で法人税の負担が出てきます。小規模企業共済を便宜的に年100万円(実際は年上限は84万円です)とすると、20年間では法人税の負担額は400万円となり、法人税を納税した後の手取りでは1,600万円となります。

この手取りの1,400万円を、法人の商売で有効活用して20年後に2,000万円以上にできれば小規模企業共済に勝ることになります。毎年、税引後で70万円キャッシュが増えていきますので、たとえば20年間の中間時点、10年後には累積で700万円のキャッシュが手許に残ってきます。この累積キャッシュ700万円を商売で上手く使って(税引後で)運用益を1,000万円稼ぎ出すことができたとしましょう。すると、元々の税引後キャッシュ1,400万円+税引後運用益1,000万円=2,400万円となります。2,400万円>2,000万円(小規模企業共済)ですので上手く運用することができれば法人税を払っても小規模企業共済を使った方法に勝ります。キャッシュを上手く運用できる自信があれば小規模企業共済に入らずに法人でキャッシュを活用する、自信がなければ小規模企業共済を使うというのがよいでしょう。

厳密な運用益の計算をするとすれば、税引後で毎年70万円増えていくキャッシュを何%で複利運用すれば2,000万円に勝るかという計算を行うことになります。商売による運用ですので理論的な複利計算がそのまま当てはまるわけではありませんが、参考までに計算してみます。

上図は、毎年、税引後で獲得したキャッシュ70万円を5%で複利運用した場合の累計額がいくらになるかを示した表です。一番左上に70万円とあるのが、1年目に獲得した70万円です。これを5%で運用できると、2年目に残る金額は70万円+(70万円×5%)×70%=72.5万円となります。

5%は運用益率で、70%は運用益に課税された法人税(30%)を控除した率です。3年目に残る金額は、72.5万円+(72.5万円×5%)×70%=75.0万円となります。こうして、20年間5%で運用していくと最終的には一番右下の1,980万円が税引後のキャッシュになります。5%だとほぼ、2,000万円となりますので5%で複利運用ができないと、小規模企業共済には負けるということです。

6%、10%の運用益は次のようになります。運用益云々は、実際この通りに予見できるわけがありませんので数字遊びに過ぎませんが、参考までに作成してみました。6%の複利運用で約2,100万円、10%の複利運用で約2,800万円という結果となりました。

退職金で節税4

カテゴリー: 節税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

社長への給与を上乗せせずに、20年後に2,000万円を退職金として支払うようにすると、20年間会社の利益として法人税が課税されてしまいます。その結果、2,000万円から法人税額600万円が控除されて累計手取り額が1,400万円になってしまうので法人税が課税された分だけ退職金を支払うだけのキャッシュが減ってしまうように見えます。

ところが、この1,400万円の累計手取り額を法人が自由に運用できるという点が小規模企業共済に払い込む場合との相違点になります。小規模企業共済に払い込んだ場合は、払い込んだ掛け金は退職金として受け取るまでは自由に運用することはできません。すべて小規模企業共済に預け入れられてしまって手をつけられません。一方、小規模企業共済を払い込まない場合は、払い込まない分の経費減少額を法人の方で法人税が課税されてしまいますが課税された後のキャッシュについては法人で自由に運用できます。

そうすると、法人がどれくらいキャッシュを効果的に運用できるのかが問題になってきます。法人にキャッシュを残して、その法人が行う商売でうまく運用して利益を生み出すことができれば小規模企業共済に払い込むよりも法人にキャッシュを残した方が有利になるわけです。

キャッシュがあればあるだけ利益を着実に生み出せる商売であれば、下手に小規模企業共済に払い込むよりも、法人税を払ってでも法人にキャッシュを残した方が商売で殖やせますのでそちらの方が有利となるケースがあります。

退職金で節税3

カテゴリー: 節税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

前日の記事で説明しました、小規模企業共済を使う場合と使わない場合とでどういった税の影響が出るかについて考えてみたいと思います。退職金は2,000万円であるとします。

退職金をもらう側の個人の所得税は、小規模企業共済を使う場合と使わない場合とでは変わりありません。どちらも2,000万円の退職金であり、所得税は152,500円です。

変わってくるのは退職金をどう支払うかを決める法人の方です。違いをわかりやすくするために小規模企業共済の年間上限額を100万円であると仮定して計算を進めます(実際は年間84万円が上限です)。  

  • (1)20年間にわたって年間100万円を社長給与に上乗せして支払い(法人で年間100万円の経費増)、社長は年間100万円を小規模企業共済の支払いとして所得控除を使う(社長の所得税負担なし)
  •  
  • (2)20年間、社長給与への上乗せは無しで20年後に2,000万円を支払う(このときに会社で2,000万円の経費計上)

(1)は法人が年間100万円を社長給与として上乗せ支給するので、法人で(2)よりも年間100万円多く経費計上され(2)と比べて法人税負担が少なくなります。(2)は(1)と比較して法人税の納税が多くなります。(2)の法人税の納税が多くなるイメージ図は次のとおりです。

(2)は(1)よりも年間100万円給与を支払わない分、利益が100万円多くなります。上の図の棒は、1年目から20年目までそれぞれ、(1)よりも100万円利益が多いことを表しています。法人の利益が100万円多くなると、その100万円の利益に対して法人税が30万円かかります(税率30%と仮定しています)。100万円の利益から30万円を納税するので残りは70万円です。これが20年間続くと、法人税の累計額は600万円となり、法人税を払った後の残りは1,400万円です。

(2)は100万円を社長給与に上乗せしないため、会社の利益となりそこから法人税の納税が行われます。(1)と比較したときに給与の上乗せ支給がない分、会社には1,400万円のキャッシュが残りますが、一方、法人税の納税が600万円生ずることになります。

退職金で節税2

カテゴリー: 節税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

誰でも加入できるわけではないのですが、小規模企業共済という中小企業経営者向けの退職金制度があります。これは最大で月額7万円(年間84万円)の掛金を中小企業基盤整備機構という政府機関に払い込んで退職金として積み立てておく制度です。退職した場合又は65歳以上になったときに積み立ててきた掛金が、退職金(この制度上、共済金と呼ばれます)として払い戻されます。

小規模企業共済のメリットは、払い込んだ掛け金の全額を、個人の所得税計算で所得控除されるところです。つまり支払った(最大)年間84万円については自身の課税所得からマイナスできるという点です。

会社のオーナー社長であれば、自分の給与は自分で決められますので年間84万円を従来の給与に上乗せして支払い、84万円を小規模企業共済として支払えば上乗せした84万円には所得税がかからずに、将来の退職金(共済金)として積み立てておけることになります。そして共済金の受け取りの際には、ほとんど税金がかからない退職所得としての優遇課税措置を受けることができます。

退職金で節税

カテゴリー: 節税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

税理士が節税の手法としてまず最初に提案するのが退職金を使った節税です。節税の王道は、高い税率ではなく、低い税率を適用させることです。

低い税率を適用させるというのは、退職金がまさに当てはまっていて、退職金は老後の生活原資であり多額の税負担では老後の生活を保障できなくなってしまいますので極端に低い税負担で済むようになっています。退職金から、「退職所得控除」というマイナスを行ったうえで、さらにマイナス後の金額に1/2を乗じた金額、つまり半額にした金額に税率を掛けて所得税が算出されるようになっています。このような計算方法であるため退職金は受取者にとって非常に優遇されている税制になっています。

このような退職金の優遇規定があるため、例えば退職金を2,000万円払うのと、その2,000万円を退職金ではなく、20年にわたって年間100万円ずつ通常の給与に上乗せして支払うのとでは、退職金として2,000万円を支払った方が退職金を受け取る本人の所得税負担が小さくなります。

(投稿者:河野周輔)

利益剰余金を資本金に組み入れる際の利益剰余金は、いつの時点の金額を使用することになるでしょうか。設立第1期目の会社で、出だしから非常に業績が良く、上半期での集計をしてみると2,000万円もの利益が出たとします。この半年間の利益2,000万円を資本組み入れできるかというと、不可能になっています。資本金に組み入れることのできる利益剰余金は、確定した決算の貸借対照表に計上されている利益剰余金であるとされています。言い換えると、半年間で獲得された利益剰余金は、まだ決算により確定されていない仮の数値であり、半年間では確定した貸借対照表は作り得ないので、第1期目では利益剰余金の資本組み入れはできないということになります。(注)

ところで、ある会社の会社謄本を見ていたところ利益剰余金の資本組み入れにより資本金の額を増加させていましたが、その減少させた利益剰余金の額が前期の確定した決算を超えるものになっていました。前期末(=当期首)の利益剰余金が500万円であるのに対して、当期に減少させた利益剰余金の額が800万円でした。これは、期中で300万円の利益を獲得したので、その期中利益分についても利益剰余金を減少させて資本組み入れを行っていました。

実際に、800万円資本金の額を増加する登記が完了していました。冒頭で、確定した決算の利益剰余金の額しか資本金に組み入れることができないと書きましたが、そのとある会社は期中利益についても資本金に組み入れる登記を完了させてしまっていました。

これについて法務局に電話で確認してみたところ、まだ確定していない期中利益を資本金に組み入れることは会社法上は正しくないのですが、登記申請書類に「形式の」不備さえなければ資本金増加の登記が完了できてしまうということでした。登記申請書類には、「その他利益剰余金の額に関する証明書」というものを添付するのですが、ここに書いてある利益剰余金の額が、確定した決算の貸借対照表に計上されている金額であるかどうかまでは法務局はチェックできません。なぜならば提出する登記申請書類には貸借対照表は含まれていませんから。正しい証明書を作成するのは会社の役目であるという考え方なのでしょう。

「利益剰余金」は、貸借対照表の金額であり、「利益剰余金」を使う際は、常に(確定した決算の貸借対照表に計上される)利益剰余金というふうにカッコ内の意味をはらんでいるということを意識しなければなりません。


【参考文献】
(注)金子登志雄 「貸借対照表上の資本金の額の変更」月報司法書士No490 20頁(2012.12)
(投稿者:河野周輔)

利益剰余金の資本組み入れにより、どんなに資本金の額を増加させても、均等割の金額は増加しません。東京都の場合、資本金等の金額が1,000万円以下であれば均等割は70,000円ですが、利益剰余金の資本組み入れの結果、資本金の額が5,000万円になろうと、10億円になろうとも均等割は70,000円のまま増加しません。これは、均等割が決まる基準は、「資本金の額」ではなく「資本金の額」と定められているためです。「等」が付くと、利益剰余金由来の資本金の額は、資本金等の額からはマイナスされます。(法人税法施行令8条1項13号)

例えば、「資本金の額」が3,000万円だとして、このうち利益剰余金由来の金額が2,500万円含まれているとします。そうすると、「資本金の額」は3,000万円-2,500万円=500万円となり、1,000万円以下になりますので均等割の金額は70,000円となります。

一方、利益剰余金由来の資本金の額をマイナスせずに判定される制度もあるので、これには注意が必要になります。法人税法では中小企業向けの税優遇措置がありますが、これは「資本金の額」が1億円以下であることが求められます。利益剰余金を資本金に組み入れた結果、資本金の額が1億円超となってしまった場合にはこの優遇措置が受けられなくなってしまいますので優遇措置を引き続き受けたいのであれば1億円以下にする必要があります。

法人税(国税)に加えて、事業税(地方税)についても資本金の額が1億円超となった場合に外形標準課税と呼ばれる課税が追加で行われることとなり、資本金1億円以下の場合よりも税負担が増加します。資本金の額が1億円超と1億円以下では課税の行われ方が変わってくることに留意が必要です。

(投稿者:河野周輔)

平成18年に会社法が施行されましたが、施行当時は、利益剰余金の直接の資本組み入れは制度として存在していませんでした。やるとすれば、株主に利益剰余金から配当を行い、株主がその配当金を元手に会社に金銭出資をする方法しかありませんでした(この方法は配当金支払時に課税が行われるので、税金分だけロスがありました。)。

会計学の重要な原理原則として、元手である資本金と、その運用結果である利益剰余金は区別しなければならないというものがあります。リンゴの木が資本金であるとすると、リンゴの果実は利益剰余金です。元本であるリンゴの木と、リンゴの果実は生い立ちがそもそも別物であるのでこれらを区別することなく同一のものとしてはなりません、という考え方です。

会社法はこの原則を厳格に守り、平成18年の会社法施行当時は利益剰余金を一度、配当により社外へ流出させなければ資本金に転化することができませんでした。しかし平成21年4月の会社法の改正で、会社法において元本と果実の区別についての考え方が緩和されたことにより、利益剰余金を直接、資本金に変化させることができるようになりました(資本剰余金と利益剰余金の互いの行き来は不可能です)。また、利益剰余金の資本組み入れは、法人税法上、株主に配当が行われたものとは見られませんので配当課税のロスも起こりません。

利益剰余金をもって資本金を増強させたい、と望む中小企業にとってこの改正は歓迎されたのではないでしょうか。

(投稿者:河野周輔)

コンサルティング業の方は、棚卸資産や固定資産の購入なしで商売が始めることができますので通常、設立時の資本金の額が少額であることが多いです。50万円や100万円でスタートする方もいらっしゃいます。一方、資本金が50万円や100万円のままですと金額が少ないものですから新しく他者と取引を始める際に与信審査でNGとなってしまうこともありますので、増資を行って資本を充実させ、対外的な信用力を強めたいという要望がよくあります。

そのときに提案するのが利益剰余金の資本組み入れです。増資と言えばまず一番最初に思いつくのが金銭出資なのですがそのためには当然現金が必要になります。一方、利益剰余金の資本組み入れの場合には現金は必要ありません。これは利益剰余金の金額を資本金の額に変更させてしまう手法です。よって、利益剰余金は減少して、その分資本金の額が増加することになります。

  • ・資本金の額を増加させたい
  • ・追加の金銭出資はしたくない
  • ・利益剰余金の累積はある
という条件が揃えば、利益剰余金の資本組み入れを行うことになります。

(投稿者:河野周輔)

税務調査は通常、直前の3期分の決算を対象とします。税務調査の連絡が税務署から来たけども、3期分すべて、給与の仕掛品計上を行ってなかったことが判明しました。この場合、税務署からどのように修正申告を求められるでしょうか。

例として次のような状況であったとします。3期決算が終わって4期目に入った会社があります。4期目に税務署から電話がかかってきて1期から3期の税務調査をしたいということでした。

1期目から3期目まですべて利益が出ており、それぞれ法人税の納税を行っています。1期目から3期目まですべて期末仕掛品を計上すべきところを、計上できていませんでした。すべての期で仕掛品計上を忘れていた場合、どのような追加納税となるでしょうか。次の図をご覧ください。

(+)は、仕掛品を計上し忘れによる利益の増加を意味します。(-)は計上された仕掛品が費用化されて利益が減少することを意味します。仕掛品の発生は利益の増加で、仕掛品の消滅は利益の減少となり、期末の(+)は、翌期で(-)されて解消します。仮定の数値ですが、もし1期末の2期末の(+)の値が両方とも50であったならば、次の図のようになります。

上のように、最終的には1期目の(+50)だけが当初申告した利益よりも増加するので、1期目から3期目まですべての期で仕掛の計上忘れがあったとしても、1期目についてのみ、仕掛計上忘れによる追加納税をしてくださいということになります。2期目と3期目は仕掛計上忘れもあるのですが、他方で前期の仕掛品の解消(消滅)による利益マイナスもあるためプラスマイナス0となり、課税所得への影響はありません。

(投稿者:河野周輔)

次に、前回の記事とは真逆のパターンではどうでしょうか。1ヶ月の社長報酬の全額が会社経営全般に対する報酬であった場合です。

前回とは逆で決算時に仕掛途中の仕事があったとしても社長の給与は会社経営報酬であるものとして、全額を経費とする考え方です。

ところが1人社長であるため、実際にはお客さんのところへ行ってコンサルティング業務を行っています。お客さんの現場でコンサルティング業務を行っている事実はあるわけなので、社長の報酬の全額が会社経営に対する報酬として考えることは、明らかに事実に反しています。これが、現場労務の割合が30%であるとの会社の主張に対し、「いやいや40%でしょう」と反論するのは骨の折れる仕事なので税務署はやろうとしませんが、現場労務の割合が0%であるとの主張に対しては「いやいや0%はないでしょ。1ヶ月のうちに10回、お客さんのところに行っている記録が残っているじゃないですか。現場労務の割合が何%になるかは(面倒臭いから)私は計算できないけれども、0%でないことだけは明らかですよね。(面倒臭いだろうけども)そちらでちゃんと現場労務割合を計算して仕掛品計上してくださいね。」と指摘するのは簡単なことなので言ってきます。

本来、仕掛品に計上すべき金額を役員報酬として経費にしていますので過大な経費計上です。過大な経費計上は過少な利益計上になりますので、つまりは過少な税金納税です。よって税務署は納税が過少ですので追加で納めてくださいねと会社に促すことになるわけです。

(投稿者:河野周輔)

前回の記事と同様に、1ヶ月の報酬が100万円である社長がいた場合に次のような報酬の内訳を決めたとします。1ヶ月の社長報酬の全額が現場労務に対する報酬であった場合です。

現実には、社長の業務は現場労務だけでなく、会社経営もありますので、上図のような報酬の内訳は実態通りではありません。なぜなら100万円のうち、いくらかは会社経営全般についての報酬も存在しているはずですので。

100万円を全額、現場労務報酬であるとして処理した場合、期末に仕掛状態の仕事があると月額100万円の労務報酬を仕掛品の対象とすることになります。その結果、損益計算書も実態を正しく表さないものとなります。なぜなら本来あるべき会社経営についての報酬についても仕掛品計上してしまっており、経費にすべき会社経営報酬を経費計上できていないために過大に利益が計上されてしまうからです。

以上により、社長給与の全額を現場労務報酬として仕掛品計上すると真に正しい損益計算書が作成されない結果となりますが、一方、税務調査においてはこの正しくない損益計算書について税務署は何も指摘はしてきません。なぜかといいますと、これは「仕掛品の過大計上」=「利益の過大計上」ですので税務署からしてみれば利益を本来よりも多く計上することにより多く納税してくれているためです。

税務署は利益を過少に計算して、税金を過少に納めている処理について追加で税金を納めてくださいねと促すのが仕事であって、税金を過大に納めている処理を発見して多く納め過ぎていましたので還付しますね、という仕事は積極的には行いません(ただし、中には税務調査で過大納税が発見されて税金が還付されることもあります)。

以上より、仕掛品を過大に計上することは税務調査では問題にはなりませんが他方、金融機関から借入を行う際には仕掛品の過大計上による利益の過大計上を行った決算書を提出することになりますので審査時に問題となる可能性はあります。

(投稿者:河野周輔)

1ヶ月の報酬が100万円である社長がいたとします。この場合、社長の労働時間の半分くらいが現場労務で、残りの半分は営業活動、会社内部の事務作業などの会社経営全般の労働であったとします。図で示すと次のようになります。


社長の役員報酬の半分が現場労務部分であると説明できれば、この50万円については仕掛品の対象となる報酬であるということになります。半分が現場労務部分の報酬として妥当である、というのは税務署が認定するものではなくて社長自身が証明しなければなりません。証明の仕方として一番説得力があるのは、社長自身が記録している日々の業務日報になります。業務日報にある時間をカウントしてみて総労働時間の大体半分くらいが現場でコンサルティングをしている、という結果になっていれば上の図のように半分を現場労務部分とできます。

がしかし、毎日、業務日報を付けている社長がどれくらいこの世の中にいるでしょうか・・・。業務日報を付けていなかったとしても税務署はそれを否定することはできません。否定するには、否定するだけの根拠が必要になるのですが税務署はそれを持ち合わせていませんので否定できません。業務日報を付けていなかったとしても何時から何時までお客さんのところにいたとか、この日のこの時間はお客さん先に移動していたという事実は何らかの形で残りますのでそれらを総合して説明してそれが妥当であると納得してもらえれば、業務日報がないからといって税務署がダメと言うことはありません。

(投稿者:河野周輔)

決算月をまたがる仕事があった場合に、仕掛状態にある仕事に関しての給与は仕掛品計上しなければならないということでしたが、役員報酬の場合はどうなるでしょうか。教科書で原価計算を学ぶと通常、役員報酬は純然たる「販売費及び一般管理費」であり、原価性はないため棚卸資産の金額を構成することはないのですが、現実問題として1人社長のコンサルティング会社で、決算で仕掛状態にある仕事があるということは起こりえます。

この場合、役員報酬であっても仕掛品を計上する必要があると考えられます。会社の従業員が代表取締役1人だけであれば、現実として社長が現場でコンサルティング業務を行っていますので社長の1ヶ月の報酬は会社経営に対する報酬と、現場労務に対する報酬に分けられなければ社長の報酬の説明がつきません。ですので社長の1ヶ月の報酬のうち、現場労務に対する報酬部分については仕掛品計上を行う必要があると考えられます。社長の1ヶ月の報酬を全額を仕掛計上するわけではなく、現場労務に対する部分の金額のみを仕掛品計上すれば税務調査では問題にならないでしょう。

なお現場労務に対する部分の金額をいくらにすればよいのかは、会社自身が決めることになります。税務署は、会社自身が決めた金額によほどの非合理性がなければ否認はできません。会社が決めた計算方法により合理的に仕掛品額を計上できていれば税務調査で是認でしょう。



—————–
 なお、法人税法基本通達2-2-9に(技術役務の提供に係る報酬に対応する原価の額)の取扱いがあり、これに該当するものについては仕掛品計上を行う必要はありません。社長の業務がこれに該当するかどうかの検討を行い、該当するのであれば仕掛品計上は必要ありません。

2-2-9 設計、作業の指揮監督、技術指導その他の技術役務の提供に係る報酬に対応する原価の額は、当該報酬の額を益金の額に算入する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が継続してこれらの技術役務の提供のために要する費用のうち次に掲げるものの額をその支出の日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加)
(1) 固定費(作業量の増減にかかわらず変化しない費用をいう。)の性質を有する費用
(2) 変動費(作業量に応じて増減する費用をいう。)の性質を有する費用のうち一般管理費に類するものでその額が多額でないもの及び相手方から収受する仕度金、着手金等(2-1-12の(注)の適用があるものに限る。)に係るもの
(投稿者:河野周輔)

決算期をまたぐコンサルティングの仕事がある場合には、従事者の給与を仕掛品に計上する必要がありますが、これを防ぐ方法として毎月売上が立つよう契約書を作成することが考えられます。毎月ごとに、その月の業務が完了したことにより売上請求を行うことができれば決算月において仕掛状態の仕事はありませんので仕掛品の計上は必要ありません。

もちろん、この方法はお客様との同意の上で進めるべきことですのでこちらの都合だけで決められるわけではありませんが、一考してみる価値はあると思います。毎月売上が立てられれば、毎月入金となりますので資金繰りの改善にもつながります。

仕掛状態の人件費は仕掛品計上するものだ、という認識を最初から持っていないと会社は決算処理でスルーしてしまいます。実際スルーしてしまっている会社は世の中にたくさんあります。税務署も、世の中の会社が仕掛処理をきちんと行っていないことを知っているので必ず税務調査では確認してきます。そのため会社は期末時点の仕掛状態となっている契約を明確にして、決算において仕掛品計上をする必要があります。

(投稿者:河野周輔)

この従業員給与の仕掛品計上は、決算で気をつけなければならない論点です。なぜ決算であるかというと、事業年度の途中でこのような仕掛品が生じたとしても決算月が到来するまでの間に仕事が完了していれば結局は決算では考慮する必要がないためです。

たとえば、決算日がH26.8.31であるとして、H26.2.1~H26.3.31の2ヶ月間のコンサルティング契約があったとします。この場合もこの仕事に従事する従業員の2月給与は仕掛品計上するのが2月の会計処理としては正しいわけなのですが、決算日がH26.8.31であるため2月給与を仕掛品処理せずに給与処理してしまったとしても1年間の決算報告書では結果的には正しい処理となります(2月だけ切り出した損益計算書では、売上なし・給与ありの関係になりますので誤りですが、この誤りは対外的に是正が求められるものではないため実害なしです)。

事業年度の途中に、仕事が完了したものについては1年間の決算書で見ると結果的に正しい処理となりますので、気をつけるべきは決算日時点での仕事が途中段階になっている契約です。「仕掛品」という名が表す通り、仕掛途中の仕事について気をつけなければなりません。この論点は、給与として経費計上していたものを仕掛品として訂正しますので、経費が多すぎた処理でした。税務署にこれを発見されてしまうと「経費が多すぎでしたね→法人の利益がその分増えますね」で法人税の修正申告(追加納税)が生じてきてしまいます。

(投稿者:河野周輔)

コンサルティング業は在庫を持たない商売なのに、どうして仕掛品勘定が登場するの?と疑問に思われるかもしれませんが、生じることも起こりえます。

具体的な例を挙げてみます。決算がH26.7.31月である法人で、受注したコンサルティングの仕事の契約期間がH26.7.1~H26.8.31でした。受注金額は216万円(税込)です。契約により、H26.8.31にコンサルティングレポートを納品することで業務が完了する契約になっています。この場合、売上高の計上は仕事が完了したH26.8.31になります。一方、会社としてはこのコンサルティング業務に従事した従業員に毎月給与を80万円支払うものとします。

そうするとH26.7月については、売上は0である一方、従業員給与を80万円支払ったことにより何も考慮しないと80万円の赤字になってしまいます。ただし、80万円の赤字とする処理は誤りであり、商品在庫の考え方と同様にこの7月の80万円の給与は売上が実現するまでは「棚卸資産(勘定科目は仕掛品)」として経費にしないのが会計理論的には正しい処理となります。

仕掛品/期末仕掛 80万円(7月分給与)・・・期末仕掛は経費のマイナスする科目です

そして、翌期のH26.8.31に、次の仕訳が行われることにより売上と経費が確定することになります。

売掛金/売上 216万円
期首仕掛/仕掛品 80万円(7月分給与)・・・期首仕掛は経費をプラスする科目です
給与/現金  80万万円(8月分給与)

↑の3本の仕訳から利益を計算すると次のようになります。
税抜売上200万円-80万円(7月給与)-80万円(8月給与)=40万円の利益

(投稿者:河野周輔)

会計の世界には、「仕掛品」という用語があります。「仕掛品」は勘定科目名であって、大きな分類でいうと棚卸資産のうちの1つです。要は在庫のことです。

棚卸資産には、仕掛品以外にも、「商品」や「未成工事支出金」があります。仕掛品は、商品や未成工事支出金の仲間ですので、呼び方は違えど、お互いに性格は同じであり会計上は同じ働きをします。

棚卸資産は、「商品」が一番イメージしやすいです。卸売業や小売業では、よそから買ってきた商品は、他者に販売されるまでは「商品」として貸借対照表の資産の部に存在します。これが意味するのは、よそから買っただけでは損益計算書上、経費にならないということです。仕訳で示すと、

商品/現金

です。そして、他者に販売されて初めて、資産の部の「商品」は、損益計算書の経費に変化します。
現金/売上・・・他者に販売
仕入/商品・・・商品の経費化

上の具体例より、棚卸資産とは、購入時(債務確定時)には経費にならず資産となり、他者に販売されたときにはじめて経費となるものをいいます。購入時に経費としないのは購入時に経費にしていたのでは、一事業年度の儲けが正しく計測できないからです。

(投稿者:河野周輔)

うまく2社とも簡易課税を使ったとして、税務調査でまず最初に聞かれるのが「会社を2つに分けている理由」です。その理由が「2社ともで簡易課税を使いたい」という理由であれば、アウトでしょう。目的が租税回避になってしまっているからです。租税回避目的以外で、2社に分かれているための経済合理的な理由が必要です。2社はそれぞれ行っている事業が違っていて事業ごとに、会社としての損益責任を持たせるために分けている等の合理的な理由が必要です。その目的に沿った結果、副次的に2社ともに簡易課税が適用されたんだということです。

また、2社に分かれている以上、それぞれの会社が外部から見て自然な経済活動を行っていることも必要です。具体的には、2つ目の会社も家賃を支払う、経理事務のコストを支払うということです。2社目の方は、そういったコストのことを忘れてしまって、家賃も経理事務のコストも1社目の方で持ってしまっては税務当局からすれば結局、一体の会社じゃないかというふうにみなされてしまいます。

ですので、2社目の方も、住所が1社目と同じにするのであれば1社目に家賃を支払う、経理事務が自身でできないのであれば1社目に経理事務委託費用を支払うなどの会社としての独立した体制を整える必要があります。

次のページ

前のページ

↑トップへ