(投稿者:河野周輔)

決算月をまたがる仕事があった場合に、仕掛状態にある仕事に関しての給与は仕掛品計上しなければならないということでしたが、役員報酬の場合はどうなるでしょうか。教科書で原価計算を学ぶと通常、役員報酬は純然たる「販売費及び一般管理費」であり、原価性はないため棚卸資産の金額を構成することはないのですが、現実問題として1人社長のコンサルティング会社で、決算で仕掛状態にある仕事があるということは起こりえます。

この場合、役員報酬であっても仕掛品を計上する必要があると考えられます。会社の従業員が代表取締役1人だけであれば、現実として社長が現場でコンサルティング業務を行っていますので社長の1ヶ月の報酬は会社経営に対する報酬と、現場労務に対する報酬に分けられなければ社長の報酬の説明がつきません。ですので社長の1ヶ月の報酬のうち、現場労務に対する報酬部分については仕掛品計上を行う必要があると考えられます。社長の1ヶ月の報酬を全額を仕掛計上するわけではなく、現場労務に対する部分の金額のみを仕掛品計上すれば税務調査では問題にならないでしょう。

なお現場労務に対する部分の金額をいくらにすればよいのかは、会社自身が決めることになります。税務署は、会社自身が決めた金額によほどの非合理性がなければ否認はできません。会社が決めた計算方法により合理的に仕掛品額を計上できていれば税務調査で是認でしょう。



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 なお、法人税法基本通達2-2-9に(技術役務の提供に係る報酬に対応する原価の額)の取扱いがあり、これに該当するものについては仕掛品計上を行う必要はありません。社長の業務がこれに該当するかどうかの検討を行い、該当するのであれば仕掛品計上は必要ありません。

2-2-9 設計、作業の指揮監督、技術指導その他の技術役務の提供に係る報酬に対応する原価の額は、当該報酬の額を益金の額に算入する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が継続してこれらの技術役務の提供のために要する費用のうち次に掲げるものの額をその支出の日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加)
(1) 固定費(作業量の増減にかかわらず変化しない費用をいう。)の性質を有する費用
(2) 変動費(作業量に応じて増減する費用をいう。)の性質を有する費用のうち一般管理費に類するものでその額が多額でないもの及び相手方から収受する仕度金、着手金等(2-1-12の(注)の適用があるものに限る。)に係るもの

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