(投稿者:河野周輔)

贈与をするにあたって、「毎年111万円を贈与して贈与税申告を行い、1,000円を納税しておきさえすれば税務署に対して贈与を行ったという意思表示ができるので後で調査があったときに税務署に文句をつけられなくなるのでおすすめです」という意味合いのことを言う人がいますがこれは正しいでしょうか?

贈与税の申告を行い、納税することが贈与の証明には決してなりません。贈与税申告をしたとしても財産の実質的な移転が行われていなければ贈与は否認されます。もらった人が財産を支配している状態にきちんとなっていれば、申告書を出さなかったとしてもまったく心配する必要はありません。(出さなくても良いのは、暦年110万円までの非課税範囲内の場合です。110万円を超える場合は、もちろん申告が必要です。)

贈与税申告書の提出が、税務署に対して「水戸黄門の印籠」になるわけではなく、あくまで贈与の実質的実態が伴っているかどうかを常に気にしておく必要があるのです。

生前贈与の話3

カテゴリー: 相続税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

贈与契約は、「あげた」「もらった」の両方の意思があってはじめて成立する契約です(双務契約)。そのため税務署対策としても、あげる人が「あげた」と認識しておく必要がありますし、もらった人が「もらった」という認識をしておく必要があります。

このことより、次の状況となってしまっているお金の移動は税務上についても贈与が成立していないことになりますのでご注意ください。

・亡くなる直前の意識がない状態であるにもかかわらず親族が勝手にお金を動かして贈与したことにした。
→税務署にとって金額が重大な事案については、税務署は病院からカルテを入手して当時の意思能力を調査し、贈与の意思がなかったことを立証してきます。

・親が子名義の銀行口座にお金を移動して子に贈与したことにした。子はその事実を知らず、また、その口座への入出金ができるのはその親だけであった。
→いわゆる名義預金となり、親の財産のままとなります。

生前贈与の話2

カテゴリー: 相続税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

先日の記事では、子への贈与は、死亡前3年以内に行ったものについては相続税計算に取り込まれてしまうため、相続税節税を図るならば5年、10年の長い期間を予定しておかなければならないということに触れました。

しかしながら亡くなる直前になってはじめて相続税対策の必要性を目の当たりにしてどうすればよいか悩むということはよく見られます。そのときに利用できるのが3年以内の贈与による相続税計算取り込みが適用されない人への贈与です。具体的には子の妻、子の夫、孫への贈与です。これらの人たちは通常は相続によって財産を手にしませんので相続税法では3年以内に贈与を受けても相続税計算の取り込みが行われません。死亡前3年間を気にすることなく、亡くなる直前の贈与であっても贈与した金額を相続税財産から外すことができますので預貯金が潤沢にある方については使える手法です。

生前贈与の話1

カテゴリー: 相続税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

現金が潤沢が場合、現金の生前贈与をする際にどのような点に気をつければよいかということが気になると思います。

気にしておかなければならないのは、亡くなる前の3年以内に贈与した財産は、すべて相続税計算に取り込まれてしまうという点です。たとえばAさんが平成27年1月1日に死亡したとして、Aさんの子Bに平成24年に100万円、平成25年に100万円、平成26年に100万円贈与した場合には、確かに毎年100万円ずつ贈与してもBさんに贈与税はかからなかったのですがこの合計300万円はBさんへの贈与がなかったものとされて結局相続財産となって相続税計算の対象となってしまします。

よって子への贈与によって相続税の節税を行うためには死亡する3年よりも昔に、贈与を行う必要があります。子への贈与は亡くなる直前に慌てて行っても相続税節税にはなりませんので節税するならば5年、10年と長い時間感覚を持って贈与を行う必要があります。

(投稿者:河野周輔)

「一に分割、二に納税、最後に節税」は相続税対策の優先順位を表した格言です。(「一に分割、二に納税、三、四がなくて五に節税」という言い方もあります。)

相続税対策というと、どうすれば節税ができるのかを一番最初に考えがちですが格言が示すとおり節税については一番最後に考えるべきです。

一番最初に、誰に何を相続させるのか(分割)を考えます。亡くなる前に、遺言によって誰に何を相続させたいのかを意思反映させることができます。亡くなった後のことは子たちで話し合って分ければよいと思うのであれば、遺言なしで相続を迎えることもできますが、長男には自宅を譲りたい、二男にはアパートを譲りたいなど親の意向がはっきりしているのであれば子たちで起こるもめごとを防ぐためにも遺言を残しておくことがベターです。

どのように分割するかがある程度決まれば、次はその分割によって生じる相続税が問題なく納税できるかどうかを検証します。相続税は遺産を多く取ったものが、取った分に応じて課税されますので多く遺産を取れば取るだけ相続税が高くなります。遺産分割で各相続人にどれだけの税金が発生することになり、それを問題なく納税できそうかどうかを検討してみましょう。

一番目と二番目の検討が終われば、ようやく、どのような節税方法が採れるのかについて検討を行います。

くれぐれも節税手法だけに目をとらわれないで、まず分割と納税についてのメドを立てておくことが円満相続のためのポイントとなります。

相続税は誰が払うか

カテゴリー: 相続税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

相続税は誰が払うか、それはもちろん残された相続人です。残された者が相続税を払いますので亡くなる人にとってみれば、自分が死んだ後の、相続人が払う税金については心配する必要もないわけです。

ところが、自分が死んだ後の相続税について悩む方は多くいます。悩みの原因は、様々です。

ある人は、持っている大半の財産が不動産(土地・建物)であったり、簡単に売却できない株式(非上場株式)であるためにそれらの換金が難しく、かといってこれらには相続税が課税されてしまうので財産を維持したまま、子は相続税を支払うことができるのだろうかという悩みです。土地・建物を手放すことは寂しいことですので子孫がこれらが維持できるのだろうか、と不安になります。

またある人は、たとえ子が支払うのであろうとも、単純に相続税を支払うのが気にくわないと考える人もいます。できることならば1円でも相続税を少なくしたい、支払いたくないと思うわけです。

自身の財産を配偶者や子に(低い税率で)贈与することで相続税を少なくすることができます。ただ、そうすると自分が自由に使ったり、処分したりすることができなくなってしまいます。それでも配偶者や子のために相続税を安くしたい、土地や建物を引き継がせたいという思いによって今日も各所で相続税対策が行われています。

いくら贈与するか

カテゴリー: 相続税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

子の配偶者への贈与に関連してですが、相続税対策のためにいくら贈与しておくかを考えるときに相続税の税率を見て、贈与額を決める方法があります。


相続によってそれぞれの相続人にかかる相続税率が30%であるとすると、相続税で30%課税されるよりも贈与で400万円現金をもらって20%の贈与税を支払った方が差の10%だけ得であるという考え方です。

さらに詳細な計算をすると、まず、贈与税は年間110万円までは非課税ですので、贈与税で20%の税率がかかるのは400万円+110万円(非課税)=510万円の現金をもらったときです。510万円の現金をもらったときに510万円-110万円=400万円が課税対象となります。この400万円に対する贈与税は、累進税率により(200万円×10%+100万円×15%+100万円×20%)=55万円が納税額になります。限界税率は20%なのですが、階段状の累進税率を平均化すると、510万円もらっても55万円/510万円=10.8%の税率で済むということになります。

資産家の方は死ぬ間際に、亡くなる方の意思でもって子の配偶者に500万円ずつ贈与で配れば有用な相続税対策になるでしょう。ただし亡くなる間際に、意識がないのに周りの家族が勝手に現金を動かした場合には、本人の意思なしとして贈与がなかったものとして税務調査で指摘される可能性がありますので注意してください。

なお、これは相続税率と贈与税率の差に着目した考え方であり、贈与すればするだけ被相続人の現金が手許からは離れていってしまいますので手許にいくら必要なのかについても、もちろん考慮する必要があります。「あげすぎ貧乏」になって困らないようにしておきましょう。

(投稿者:河野周輔)

子の配偶者が相続で義父や義母の財産を取得するとなると、通常は遺産分割協議書によって話し合いで財産を取得することを決めるか、あるいは遺言書によって子の配偶者に財産を取得させる旨が記載されていることによって財産を相続することになります。

もう1つ、上記以外の方法でも子の配偶者が財産を取得する方法があります。それは被相続人の死亡保険金の受取です。義父や義母が亡くなったときの死亡保険金の受取を子の配偶者に指定しているときには子の配偶者は相続により財産を取得した状態になってしまいます。それがゆえに、死亡保険金の受取人に子の配偶者が指定されている場合には、3年以内贈与による相続財産外しは使えなくなってしまいます。

子の配偶者が、義父・義母の死亡保険金の受取人になっているケースはそう多くはないと思いますが、相続税節税のための3年以内贈与を実行する前には念のため確認しておく必要があります。

(投稿者:河野周輔)

子の配偶者への贈与は、3年以内贈与で相続税がかからないので相続直前の対策として有効なのですが、事前に注意しておかなければならないのが、子の配偶者が相続によって財産を取得することにならないかどうかです。

そもそも、子の配偶者が贈与を受けても相続税課税財産にならないというのは、無条件でそうなるわけではなく、条件付きです。どのような条件かというと、「子の配偶者が相続によって財産を取得しない」という条件です。

ほとんどの相続では、子の配偶者が相続によって義父や義母の財産を取得することはありません。ですので、ほとんどの場合、次の状況になります。

子は相続によって財産を取得する→3年以内贈与は相続税の課税対象になる
子の配偶者は相続によって財産を取得しない→3年以内贈与は相続税の課税対象にならない

一方でレアケースではあるのですが、遺言によって子の配偶者に財産を相続させてしまう場合には、相続によって財産を取得した者には3年以内贈与の相続税課税が適用されてしまうので3年以内贈与による節税が活かせなくなってしまいます。この点、留意が必要になります。また生命保険金の受取人を子の配偶者に指定している場合にも、相続により財産を取得することになりますので3年以内贈与の相続税課税対象となりまs。

(投稿者:河野周輔)

相続人に現金を贈与したとしても、その贈与が相続が起きる前の3年以内であると、その贈与はなかったものとして贈与金額についても相続税計算に取り込まれて相続税が課税されてしまいます。亡くなる前の3年以内に、あわてて相続人に現金を贈与しても相続税の節税にはつながらないところが税を取る側からすればよくできた制度になっています。

相続開始前の3年以内の贈与がなかったものとして相続税が課税されるのは、「相続人への贈与」です。よって相続人ではない人への贈与については、3年以内にあっても相続税計算には取り込まれません。具体的には、相続人の配偶者(妻・夫)への贈与であれば3年以内贈与の相続税課税がありません。

これを上手く使うことによって相続直前であっても贈与により相続税の負担を減らすことができます。子が3人いて、それぞれが結婚しているとすれば、子の配偶者3人に贈与します。1年間に110万円までであれば贈与税は非課税です。配偶者であれば家計が同じですので贈与を受けた配偶者の方に生活費を多く出してもらえば、贈与を受けない相続人の方でも支出が少なくなる分、お金が貯まることになります。

銀行口座への振り込みで贈与を行う場合には、子の配偶者が普段引き出している口座に振り込むことをお勧めします。贈与した現金をプールするためだけの口座を新規に作成してそこに振り込んだ金額が手つかずの場合には被相続人の名義預金とみなされ、被相続人の財産であると税務調査で指摘を受ける可能性があるためです。

(投稿者:河野周輔)

遺産分割協議書に訂正箇所があった場合には、次のように訂正を行います。法的効力を持つ文書ですので二重線の上に捺印をするやり方はとりません。

1.訂正箇所を二重線で削除する(二重線には押印しません)
2.訂正ページの余白に相続人全員の実印を押印します
3.実印の下に訂正内容を記載します

(投稿者:河野周輔)

亡くなった方の財産を相続人で分ける際に、遺産分割協議書を作成します。(遺言書がない場合。ただし遺言書があっても遺産分割協議書による分割は可能です。)遺産分割協議書には相続人全員が署名し、実印を押印します。

さて、銀行預金を払戻しを行う際には、銀行所定の用紙に相続人全員の署名と実印が必要になってきます。銀行によってフォーマットは異なりますが、どちらにしても相続人全員の署名と実印が必要になってきます。銀行によって、用紙の呼び名が次のように違っています。

三菱東京UFJ銀行:相続届
三井住友銀行:相続に関する依頼書
みずほ銀行:相続関係届出書

遺産分割協議書に自署・実印をもらう際に、この銀行の預金を払い戻す用紙も準備できていれば署名・実印が一回で済みます。遺産分割協議書の作成の際に、銀行の払戻し手続用紙も一緒に入手しておけば相続にかかる手間を減らすことができます。

(投稿者:河野周輔)

ゆうちょ銀行のホームページにある相続手続を見ると、預金の払い戻しがどうやって行われるかを次の箇所で確認することができます。


1 代表相続人の通常貯金口座へ入金する
2 払戻証書を発行する
3 名義書き換えを行う

という3つの方法から選ぶことになっています。

次の表は、ゆうちょ銀行に相続が起きたときに提出する書類の抜粋なのですが、ここに先に書いた3つの払戻し方法が記載してありますので、ここから払戻し方法を選択することになります。

1 代表相続人の通常貯金口座へ入金する
は、代表相続人が既に持っているゆうちょ口座に亡くなった被相続人のお金を全額送金する方法です。代表相続人1人に、全額が送金されますので、送金された後、遺産分割協議書の分け方に従って代表相続人口座から各相続人に送金してあげる必要があります。

2 払戻証書を発行する
は、ゆうちょ口座に送金するのではなく郵便局窓口でキャッシュで受け取る方法です。払戻証書に金額が書いてありますのでその金額をキャッシュで受け取ることができます。なお、ゆうちょ口座を持っているときは払戻証書を郵便局窓口に持っていけば、キャッシュが目の前に積まれることなく、ゆうちょ口座に直接入金してもらうこともできます。これを行えば結局は1と同じことになりますが、払戻証書が送られてくる分、ワンクッション手間がかかります。

3 名義書き換えを行う
は、被相続人のゆうちょ口座をそのまま代表相続人の名義に変更されます。代表相続人がゆうちょ口座を持っていない場合に選択することができます。

(投稿者:河野周輔)

相続が起きた場合、ゆうちょ銀行での預金払戻し手続は、普通の銀行とは異なるところがあります。銀行の場合には、窓口に必要書類を持参し、銀行所定の必要書類に記載を行えば、あとは銀行の処理となり待っておけば相続人に預金が払い戻されます。

ゆうちょ銀行は、相続による払い戻しの手続については、各郵便局で行うのではなく事務センターというところで行う関係上、
1.相続確認表を郵便局に提出
2.払い戻しのための必要書類を提出
という2段構えの書類のやりとりになってきます。

下の図でいくと、まず、Step1と2で1~2週間かかり、Step3と4で1~2週間かかりますので、長く見積もって約1ヶ月ほど払い戻しまでに時間がかかる場合があるということを念頭においておかなければなりません。

(ゆうちょ銀行ホームページより)

贈与税の優遇制度

カテゴリー: 相続税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

ここのところ、政府は贈与税の優遇措置を拡大してきています。住宅取得のための贈与、教育のための贈与、結婚資金のための贈与といった具合に優遇制度が増えてきています。政府は、金融資産を多く持つ高齢者から、子や孫に資産を移転を行わせて経済を活性化させようとしています。

住宅取得、教育、結婚の資金贈与をしたときの優遇の特徴は、物・サービスを購入しないことには贈与税の優遇を受けられないということです。ただ単に、お金をあげただけでは贈与税がかかってしまいまして、家、教育、結婚式を購入してはじめて、贈与税の優遇が受けられることになります(購入前に資金贈与が必要で、購入した後に資金贈与してもダメです)。これは非常に上手いやりかただと思います。物・サービスの購入の裏付けがあるのであれば贈与税を免除してあげますという政府のメッセージです。贈与税免除のインセンティブを与えることで、高齢者のお金が高額な物・サービスの購入のために使われ、財布の紐が固くなっている高齢者のお金が市場に出回るようになります。

相続税の基礎控除がH27.1.1から引き下げられて増税となりましたが、一方で贈与税の非課税制度が拡充されていますので、相続税増税の穴埋めというわけではないですが贈与税の非課税制度の活用がぴったりと当てはまる方は検討してみる価値があると思います。

あと、贈与税の非課税制度が存在していない高額商品といえば車でしょうか。若者の車離れとも言われていますので、政府は車購入資金の贈与非課税制度を創設すれば車メーカーや車が欲しいと考えている若者に喜ばれるのではないでしょうか。

また、お金を使わせて日本経済を活性化させるということで、国内旅行をしたときに旅行金額の一定額を所得控除させるというのはどうでしょうか。地方に高齢者のお金が落ちるのではないでしょうか。

(投稿者:河野周輔)

住宅を購入するために、親や祖父母から資金の贈与を受けた場合の非課税制度について、金額が拡充されます。概要としては次の図のようになります。(財務省資料より)


青い部分の金額が、今回の大綱によって拡充された金額です。特に、H28.10.1~H29.9.30までの期間についてはプラス1,800万円が上乗せされて、3,000万円の住宅購入のための贈与が非課税です。(耐震・エコ・バリアフリー住宅の場合)

この期間の非課税が特に大きいのは、消費税がH29.4.1から10%に引き上げられますので、引き上げの半年前から1年間については住宅購入の需要を引き上げるために特別に非課税枠を大きくしています。

住宅購入という条件付ではありますが、3,000万円という金額が非課税というのは非常に大きいです。子や孫のために住宅資金を贈与するというのはよく見られる行為ですのでちょうど住宅購入のタイミングが合う方についてはこの3,000万円の贈与は強力な相続税の節税対策となります。

なお、耐震・エコ・バリアフリー住宅でない一般住宅の場合については次の図のようになります。


(投稿者:河野周輔)

先日は、教育資金の一括贈与非課税について書きましたが、教育資金贈与に加えて、平成27年4月1日より「結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税」制度が創設されます。

贈与税の非課税の手続を受ける手順は、教育資金贈与のものと同じになるようです。この制度で、非課税となる支払いは、結婚式費用、新居の住居費用・引越費用、出産費用、不妊治療費用、子の保育料などになります。

子・孫ごとに1,000万円までが非課税になります。ただし、結婚に際して支出する費用については300万円までしか非課税となりません。

結婚式等の費用が300万円とすると、残りの非課税枠は700万円です。700万円を非課税で使い切れるとすれば、新居の住居費用でしょうか?新居を家賃15万円(月額)で借りたとすると約4年で700万円を消費できます。ただし、もしかすると「新居」は結婚してから○年以内という縛りが入る可能性があり、仮に「新居」の定義が1年以内だとすると、15万円×12=180万円しか消費できませんので節税効果が低くなってしまうかもしれません。いえ、そもそも新居の住宅費用は家賃ではなくて引越代のみが対象となる可能性もあるでしょう。そうなると節税ために使える費用がそれほどはない、ということになってしまいます。

あと、教育資金一括贈与と大きく異なる点がありまして、結婚・子育ての方はあげた人が死亡してしまうと、死亡した時点で、使い残しの金額があげた人の相続財産に取り込まれてしまうという点です。教育資金の方は、あげた人が死亡しても、あげた人の相続税計算ではなく、後になってもらった人の贈与税として税計算が行われますが、結婚・子育ては、あげた人の相続税計算が行われるという点が両者の違いです。

このように結婚・子育て資金贈与は、あげた人の死亡時点での未消費残高は相続税計算が行われますので、教育資金のように一括贈与額を相続財産から外せません。ですので暦年による連年贈与で毎年110万円お金をあげるのと効果はたいして変わらないようと思えますが、メリットして考えられるのは孫への贈与でも贈与者死亡時の相続税計算で、2割加算が行われない(大綱45ページ)ということと、贈与者(祖父母・親)が一括して金融機関に払込みますので、あげる側からすれば必要な都度都度、お金を動かす手間が省けるということ、贈与したお金を遊興費に使われないことでしょうか(逆にもらう側は、領収書の持参の手間が発生してしまいますが)。メリットを魅力に思える場合には検討してみてもよいでしょう(個人的には、魅力的には感じませんが)。

(投稿者:河野周輔)

教育資金一括贈与の非課税の適用期間の延長が行われました。

平成27年12月31日までの期間であったものが、今回の大綱によりますと平成31年3月31日までと3年以上の延長となりました。延長されたことにより時間の余裕ができましたので、検討を考えている方々にとって慌てなくてもよいこととなりました(住宅ローン減税のように今後、長期間延長される可能性もあります)。キャッシュが潤沢にある、子孫の教育にはお金をかけたい、相続税を節税したい、という考えがある人にとっては教育資金一括贈与の非課税は有用だと思います。

また、これまでは海外留学渡航費用は教育資金に該当せず、非課税の対象外でしたが大綱によりますと、海外留学渡航費も非課税の対象となります。ただし移動にかかる費用が非課税の対象であって、海外現地での滞在費・生活費については、恐らく引き続き教育資金に該当しないと思われます。

相続税の増税

カテゴリー: 相続税のハナシ

(投稿者:河野周輔)

平成27年1月1日~の相続から基礎控除額の縮小が行われることとなりました。これにより、これまで相続税の心配がなかった人であっても、今後は、相続が起きたときに相続税を払わなければならない可能性が出てきます。

どういった方が相続税を払うことになるのか、具体例を挙げてみます。妻が亡くなって、その子ども2人が相続人であるケースを考えてみます。妻の相続財産は6,000万円の現金です。

夫は過去に他界していることにします。他界していることにしているのは、「配偶者の税額軽減」を使わないようにするためです。相続人のうちに配偶者(夫・妻)がいる場合には「配偶者の税額軽減」という超強力な優遇規定により、配偶者(夫・妻)は1億6,000万円まで遺産相続しても相続税がかかりません。これを上手く使うことで相続税対策の幅が広がりますが、今回は増税の影響を見たいので配偶者の税額軽減は使えないことにします。
(※一定の場合には1億6,000万円を超えて配偶者が取得しても配偶者には相続税はかかりません。)


これまでは基礎控除額が(5,000万円+1,000万円×2/民法の相続人の数)=7,000万円であり、6,000万円(相続財産)-7,000万円(基礎控除)<0となるため、相続税はかかりませんでした。ところが、これからは基礎控除額が(3,000万円+600万円×2)=4,200万円となり、6,000万円-4,200万円=1,800万円に対して相続税がかかります。基礎控除は従前の6割まで下がってしまいました。

この例での、H27.1.1~の相続税額は、子Aと子Bの2人「合わせて」180万円です。6,000万円の現金を2人でどう分けるかで、子Aと子Bのそれぞれの相続税は変わってきます。子Aが5,000万円取れば、相続税は180万円×5,000/6,000=150万円というふうに計算されます。このとき、子Bの相続税は30万円です。

税額自体は、これまで払ってきた所得税、住民税、固定資産税と比較すれば全然大した金額ではないですが相続税申告の手続を税務署に対して行わなければならないということは少々気が重くなるかもしれません。人間、給与天引きされる税金の痛みはあまり感じませんが、能動的に支払う税金には痛みを敏感に感じてしまうものです。

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次に、従前は少額の相続税で済んだものがH27.1.1~はそれなりの相続税になってしまうケースです。妻の相続財産が7,500万円の現金である場合です。

これまでと、これからは次のようになります。

従前は相続税額が50万円で済んでいたものが今後は395万円となります。基礎控除が2,800万円減少してしまったので、この基礎控除2,800万円の減少分について、相続税が50万円→395万円と345万円増加してしまいました。

このケースの限界税率(累進税率の高いところの税率)は15%です。限界税率×基礎控除減少額がだいたいの増税額になります。このケースでのざっくりとした増税額計算は2,800万円(基礎控除減少額)×15%(限界税率)=420万円です。345万円とぴったり一致しないのは相続税率10%が適用される部分もあるためです。

大資産家ほど、限界税率が高くなり(最高55%)、基礎控除の減少による増税金額が大きくなる関係になります。限界税率が55%の人(一定計算後の遺産が6億円超)ですと2,800万円×55%で1,540万円の増税となってしまいます。

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